少女T 1-2

2011年10月4日
議会場は大パニックになった。壁が燃え、天井が崩れ、人々の逃げ道をどんどん奪って行った。
「みんな、とにかく避難するんだ!」長官がそう叫んだ。
「しかし、長官!逃げ道がありませ…うわぁ!」
男性の足元に天井の一部が落ちてきた。
「ど…どうすれば…」
騒ぎは建物の外まで広がっていった。人々は建物から離れ、街は大騒ぎになっていた。消防隊が駆けつけ、街のポケモン達と共に消火活動を始めたが、火の勢いは止まらない。そんな様子を、街を通りかかったトウヤも見ていた。
「これは…一体何が起こっているんだ!」
少年は信じられない目の前の事実に唖然としていた。彼もミジュマルを出した。
「ミジュマル、お前も火を消すんだ!」
「ミジュッ!」
ミジュマルも精一杯水鉄砲で火を消そうとした。しかし、ミジュマル一体の水が加わったところで、事態はほとんど変わらない。
「ダメだ…全然ダメだ…オレたちには何もできないんだ…」
彼は予想以上の火の強さに圧倒されていた。彼は、中でギャラドスが火を吹いていることを知らないのである。
「誰か…助けてくれれば…」
その時だった。

「グギャァァァァァァァァ!!」
恐ろしく、低い吠え声が、どこからともなく聞こえてきた。
「何だ!」
「何の音だ!?」
人々にも聞こえているようだった。トウヤはあちこちを見回した。しかし、何も見当たらない。
その時、彼の足元が暗くなった。それが何かの影だと気づくまでには、少し時間がかかった。そして、彼は上を見た。
「グギャァァァァァァ!!」
上空には、大きな、黒いポケモンが、翼を広げて飛行していた。いや、太陽のせいで黒く見えていただけかもしれないと彼は思ったが、そのポケモンが地上に近づくに連れ、それが本当に黒いポケモンであるとわかった。
「あれは…」
「あれは伝説のポケモンよ!伝説のポケモン、ゼクロムよ!間違いないわ!」
1人の女性がそのポケモンを見て言った。
(ゼクロム…?)

トウヤはその名前を聞いて何か不思議なものを覚えた。いつか聞いた、何かの名前に似ている…。
「しかし、何でこんなところに伝説のポケモンがいるんだ!?」
男性が女性に尋ねた。
「きっと、街の危機を感じて、助けに来てくれたのよ!」
その時、トウヤの後方から、足音がした。普通の、歩くスピードのようであった。そして、その足音が止まったとき、彼は横を見た。そこには、キャップをかぶった、長い髪を後ろで縛っている少女が立っていた。
トウヤは一瞬目を疑った。しかし、しばらく彼女を見た後、彼は確信した。
(T!)
そう、彼女は紛れもなく、村で出会った謎の少女〝T”であった。
「おい君、危ないからここを離れなさい!」
1人の男性が彼女にそう告げた。しかし、彼女は動こうとしない。
「下がっていなさい」
彼女は男性やトウヤの前に手を伸ばした。
「しかし君…」
「いいから、下がっていなさい!」
彼女はそう言い張った。男性とトウヤは、彼女の元を少し離れた。

「ゼクロム、クロスサンダー!」
彼女は建物を指差して、黒いポケモンに命じた。
「グギャァァァァァァァァァ!!」
ポケモンは大声で吠え、体に巨大なエネルギー体を纏った。ジリジリ…と音がしている。どうやらそのエネルギー体の正体は、電気の塊のようだった。そして、巨大な電気の塊を纏ったポケモンは、建物の中へと突進していった。
ドドン!ババリバリバリ!!
激しい電撃の音が轟いた。そして、強大なエネルギーが発生した。
「すごいエネルギーだ…!」
「おい、みんな逃げるぞ!」
そう言って、建物の外にいた人々は咄嗟に走り出した。
「おい、みんな!今のうちに火を消すんだ!」
消防隊員の一人がそう言った。そして、ママンボウ、ブルンゲル、バスラオ、ガマゲロゲなど、沢山の水ポケモン達が、燃えている建物に向かって一気に水を噴きだした。

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