少女T 4-1

2011年10月4日


次の日、トウヤはヒウンシティで聞き取り調査を受けた。彼は、彼女と一緒に美術館から出てきたところを目撃されたのだ。
「彼女と、どういったご関係でしょうか?」
彼は真実を隠し通そうとした。だが、こうなった以上いつかは暴かれると予感した。
「いえ、偶々ここで会ってちょっと話していただけですけど…」
「しかしあれはどう見ても、彼女と親しい関係で、彼女とこの美術館の遺物を見ていたようにしか見えませんでしたがね」
「いえ、彼女とは今日ここで知り合ったばかりです。彼女が興味深そうにまじまじとここの遺物や書物を眺めていたものですから、ちょっと話が合いそうだと思って話しかけたんです」
「そうですか…彼女のことは何もわからないと?」
「はい。名前も身元もわかりません」
「そうですか…ご協力ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ、おやくにたてなくてすみません」
彼はホッとした。なんとか言い逃れることができた。しかし、次に見られたときはもうおしまいだと思っておくことにした。
トウコはあのあと、美術館を離れてどこかへ走り去っていった。ヒウンシティをあとにしたか、それともまだ街のどこかの建物に隠れているのかはわからない。トウヤは、彼女に連絡してみることにした。ここで電話すると、街の人々に訊かれてしまうので、メールで送信することにした。

〝今警察の人たちに聞き取り調査を受けた。
 君がまだヒウンにいるのかどうかはわからないけど、ヒウンにいたら危ないから出て行った方がいいよ。
 それと、オレと一緒にいると危険だから、君と会える場所は限られてくる。なるべく人気のない場所で会おう”

彼はそう綴った。そして、送信ボタンを押し、そのメールを送信した。
1分近くして、返信が帰ってきた。

〝ありがとう。あたしはライモンシティに向かうよ。その途中の砂漠に、古代の遺跡があるの。そこでいろいろ調べたいから、そこで合流しよう”

そんな文章だった。彼は一言、〝わかった”と送信し、ヒウンシティの来たゲートを目指した。
街中は大騒ぎだった。彼女の三度目の登場、伝説のポケモン、そして街を襲う謎のカイリュー…。イッシュ各地の警察や新聞社、テレビ局までもがヒウンに集まってきた。このことは、後に新聞記事のトピックとして取り上げられるだろうと思った。テレビ局も来ていたので、今でも現在進行形でニュース番組でこのことが報道されてるのではないかと思い、彼は携帯のワンセグを付け、ニュース番組に切り替えた。
彼の予感は的中した。ヒウンシティの、爆発した建物、美術館が映っていた。レポーターがマイクを持って必死に何かを訴えようとしているが、騒ぎのために声が聞こえない。よく見ると、その後ろに、携帯でワンセグを見る自分の姿まで映っていた。彼はこのままではマズいと思い、その場を離れようとした。自分は東側に映っていたので、西側に走ったら画面の真ん中まで来てしまった。そして、反対方向の東側に走り、ようやく画面から姿を消した。

彼はその後、ライモンシティの北ゲートへ向かった。通りに人はほとんどいなかった。取材やテレビの報道をしていると聞いて、現場に集まってしまったのである。爆発のため、店もほとんど閉まっていた。
(安全にこの街から出られるタイミングは今しかない!急ぐんだ!)
彼は大急ぎで走り、通りの外を目指した。人が全くいないので、思い切って走りそうになった。あまりに思いっきり走りすぎて、途中転びそうになることもあった。
ようやく通りの外に出られた。そこには、噴水の広場があった。上を見ると、高層ビルの破壊された跡がたくさんあった。瓦礫もたくさん落ちていた。こんなところまで攻撃していたのか、と、彼は驚きを隠せなかった。
噴水の向こうを見ると、もう一つ通りがあった。案の定そこにも人気は全くなかった。彼は噴水を見た後、再び走り出した。
(考えてみれば、今まで街がこんな被害に遭ってるのは、いつもトウコが訪れた時だ。なんでいろんな街がこんな被害にあってるのか、なんでトウコがいるとこんな被害が出るのか、突き止めなきゃ。オレがやるしかない)
彼はそう考えながら走った。彼はトウコのことがますます心配になった。最初は彼女と彼女のポケモンなら、どんな難関も乗り切ってくれると思っていた。しかし、ここまで大勢が被害に遭うと、彼女だけの問題ではなくなってきそうだった。

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