少女T 5-1

2011年10月4日


彼らは遺跡の頂上に辿り着いた。一見何もない広場だった。
「本当にここにそんなポケモンいるのか…?」
トウヤは不思議そうに周りを見回した。
「あれを見て」
トウコは奥の方を指差した。
「何?」
トウヤは真前を見たのでよくわからなかった。そして、トウコは、彼が理解できなかったのを知り、指差した方へと歩いた。
「これだよ」
彼女はある程度歩いたところで、足元を指差した。そこには、不思議な、紋章のような模様が描かれていた。
「なんだ?これ」
「ここから、古くからこの地に語り継がれる、特別なウルガモスが目覚めるの」
「こんなところから?どうやって?」
「これよ」
彼女はバッグの中から何かを取りだした。宝石のようなものだった。
「なんだ?それ」
「〝蝶の石”と呼ばれる宝石よ。ウルガモスが撒いた鱗粉が固まってできたと言われているの。イッシュのどこかに何個か落ちているらしいんだけど、今のところこの1個しか発見されてない」
「なんでそんな石を持ってるんだ?」
「あたしがレシラムと出会ったとき、この石を授かったの」
彼女はそこまで話すと、その石をグッと握りしめた。トウヤは、それ以上は質問しないことにした。
「あたしに力を貸してください」
トウコは目を閉じて、祈るようにささやいた。そして、目を開き、その石を模様の真ん中に置いた。そして右手を翳してまた目を閉じた。すると、模様と石が突然光りだした。
「何だ…これ…」
トウヤは驚きを隠せなかった。その時、石や模様から、炎が噴き出した。
「わぁっ」
トウヤは熱さのあまりに後ろへ倒れ込んだ。しかし、トウコはじっと座ったままだった。そして、炎の中に、翼のようなものを広げた影が見えた。
(なんだ…)
トウヤは熱いのを我慢して目を開いていた。
やがて炎が消えた。そこには、さっきまでいなかったものがいた。蝶のような姿をしていた。3階で見た絵のポケモンにそっくりだった。
「トウコ、これが例の…?」
トウヤは迷わず訊こうとしたが、驚きのあまりに名前が出てこなかった。すると、トウコは彼の方を見て、無言で頷いた。

しばらくして炎が消えた。あたりの床は黒焦げになっていた。
ウルガモスはトウコの方をジーっと見つめていた。何かを訴えようとしているような目つきだった。
「お久しぶりです。今回も、あなたの力をお借りしようと思っています」
トウコはウルガモスに向かって笑顔で話しかけた。ウルガモスはそれに応えるように体を揺らした。
〝また例の草の楽園か…”
どこからか低い声が聞こえてきた。トウヤには、それが誰の声なのかわかっていた。
「はい、そうなんです。また空気が荒れ果て、もう植物たちのクラス道等ございません。どうかお助けを」
トウコはひざを折って頭を下げた。声の正体は、紛れもなくウルガモスのものだった。
〝そこで気になったのだが…後ろにおる少年は何者だ…?”
ウルガモスはトウヤの方を見た。トウヤはひやっとした。その少年というのが、自分であるとすぐにわかったからである。
「オ…あ、いや、僕は彼女の…」
彼は言葉に詰まった。するとトウコが立ち上がった。
「彼は私の友人です。決して怪しいものではございません」
〝そうか…”
ウルガモスはまた体を揺らした。そして、二人に背を向けた。
〝今回も私が楽園へ連れて行くとしようか…”
「お願いします」
そう言ってトウコはウルガモスの背中に乗った。
〝少年、お前も乗るがよい”
「え…」
トウヤは初めは驚いたが、流されるようにウルガモスの背中に乗った。
〝絶対に落ちるでないぞ!”
ウルガモスはそう言って飛び立った。最初はトウヤも不安だったが、そんなに怖そうな感じではなかったので、少し安心した。

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